2012年8月27日月曜日

太陽光発電「我が家の発電効果」ネットで公開( 2012/8/20 6:30日本経済新聞 電子版)

太陽光発電装置を自宅に設置した人のネットワークが広がっている。
ブログで毎日発電実績を発信しあったり、ネットの専門サイトで情報交換をしたり。
太陽光発電の口コミの輪だ。
7月から自然エネルギーの新たな買い取り制度が始まり、導入を考えている人にも、利用者が発信する情報は強い味方になりそうだ。

 「午前中は厚い雲がかかって太陽が隠れていたため、30キロワット時は超えなかったけど、よく発電してくれました」。
コメントとともに、その日の発電量や電力会社に売った量を示すモニターの写真が掲載されたブログ「太陽の恵み」。
神奈川県横須賀市在住の坂部純一さん(47)は毎日、自宅の太陽光発電の効果のほどを公開している。

 坂部さんが装置を自宅に設置したのは昨年5月。東日本大震災と原発事故を受けた計画停電の対象に職場が含まれ、電気の大切さを思い知ったこ
とがきっかけだった。

 「みんなで太陽光発電をすれば原発を減らせるのではないか、という思いもあった」。設置費用は約300万円で、うち35万円ほどは国や自治体の
補助金でまかなった。

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導入を決める際、同じような他の利用者のブログを参考にしたので「自分も」と、設置当初からブログを始めた。
ブログへの書き込みがきっかけで知り合い、情報のやりとりをする人も増え「交流を楽しんでいる」と坂部さん。

 太陽光発電装置をつけると、情報を発信したくなる——。そんな法則があるかのように、太陽光発電に関するブログは増え続けている。
ポータルサイト「にほんブログ村」に登録する環境関係のブログのうち、太陽光発電がらみのものは約430サイトと最も多い。
その多くは毎日の発電量や天気、売電でどのぐらいお金が入ったかなどを利用者たちが公表しているものだ。

太陽光発電の見積もりサイト「グリーンエネルギーナビ」の運営会社、アイアンドシー・クルーズ(東京都港区)の上村一行社長は「節約する主婦
が家計簿をつけるのと一緒。
節電すると余った電力が売れるので、毎月どのくらい売電が増やせたか、"発電通帳"をつける感覚だ」と解説する。

太陽光発電装置は昔に比べて安くなったとはいえ、一般家庭の屋根に設置すると通常100万円以上はかかる代物。
今後の導入を考えている人にとっては、どんなメーカーや販売会社がいいのか、故障はしないのか、といった情報が大切だ。
今でも訪問販売が大半を占めるので、販売会社の話をうのみにしない意味でも口コミは頼りになる。

また設置地域によって天気、日照時間が違うため、自宅の装置がちゃんと発電しているのかを知るには、同じ地域の他の利用者の実体験が聞きた
い。
利用者の社会貢献意識の高さもあり、ブログで発信する人が増えたようだ。

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 こうした利用者たちの声を集めて、さらに情報として有効活用する動きも出てきた。
専門サイト「ソーラークリニック」では、全国の利用者が毎月の発電量を書き込み、各地域の発電実績や、天気から推測した推定発電量との比較が
一目で見られる。
サイトを手弁当で運営する住環境計画研究所(東京都千代田区)の鶴崎敬大研究主幹によると、4年前までは毎月数人程度の登録だったのが、今は
月に100人ほどが新たに登録し、「登録発電所」は約3100に達したという。

 岩手県奥州市の佐藤浩史さん(34)はその一人。
「同じ地域の人と比べることで、発電量が低いのは天気のせいなのか、故障なのかがわかる」と話す。

 ネット上だけでなく、地域で利用者の輪を広げる活動に乗り出した人もいる。
埼玉県和光市の中川善樹さん(64)は4年前に装置を設置して、翌年にブログをスタート。
加えて今は、新たに装置を設置した家を見かけたら、市内の利用者宅の大まかな地図や、故障に関する注意点、自分の連絡先などを記した書面を配
る活動をしている。
仲間とともに「温暖化防止!和光の会」というグループも立ち上げた。

 「一人じゃないよ、と伝えてあげたい。安心材料になってあげたい」と中川さんはいう。

 「お客さんが情報公開をして、その知見をみんなでシェアできる時代になった。
太陽光発電への理解が深まり、結構なこと」。太陽光発電装置のメーカーなどでつくる一般社団法人・太陽光発電協会(東京都港区)の亀田正明広
報部長も、口コミの輪の広がりに期待を寄せている。

◇            ◇

7月から始まった自然エネルギーの買い取り制度は、太陽光や風力、地熱などでつくった電気を固定価格で一定期間買い取る制度。
住宅用太陽光発電については2009年11月から一足先に同制度が始まっている。

具体的には今年度に太陽光発電装置を設置すれば10年間は1キロワット時あたり42円で、余った電気を電力会社に買い取ってもらえる。
加えてシステム自体が安くなり、国や自治体の補助金も利用すれば投資の元がとれる可能性が高まったため、設置は急増している。

太陽光発電協会によると、住宅用装置の設置件数は、国の補助金を受けたものだけでも、11年度が前年度比約25%増の約23万6千件。累計では今年
4月に100万件を突破した。

ただ天気や故障の影響で発電効率が下がれば、思惑通りに投資が回収できない可能性があることには注意が必要だ。

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